世界市場3.8兆円、日本アニメは転換点へ―

積極的なM&Aが、日本アニメの急成長を後押ししてきた一方で、業界の巨大化は中小との格差拡大や企画の保守化といった新たな課題も生んでいる

昨今の国外でのアニメビジネスの伸張には目を見張る。日本動画協会の「アニメ産業レポート2025」によれば、24年の日本アニメの世界での市場規模は3兆8407億円で10年前の2倍以上。とりわけ国外の伸びは大きく、24年には2兆1702億円と、過去12年で実に9倍の急成長を遂げた。

こうした急拡大はグローバルな配信プラットフォームの普及によってもたらされた。国境を超えて廉価で視聴できる配信が、これまで日本のアニメを知らなかった人たちに作品を届けたからだ。コロナ禍の巣籠もり需要がこれを増幅し、アニメファンが世界中にあふれることになった。 ただ日本アニメの国外への広がりにはもう1つ別の理由、国内企業の変化がある。エンタメ企業でも長年、傍流だったアニメが、主力事業と捉え直され躍進のエンジンとなった。 その代表はソニーだ。18年の中期経営戦略方針で初めて経営全体の一角として「アニメ」に言及した後、アニメ事業に向けてアクセルがかかった。東宝がアニメを映画、演劇、不動産に続く第4の柱に据えたのもこの時期だ。今では放送局、映画会社、広告代理店の多くが、アニメ事業の強化を標榜する。 この流れのなか、M&A(合併・買収)が積極活用されている。 ソニーは17年に北米最大のアニメ配給会社ファニメーションを、21年には世界最大のアニメ配信プラットフォーム、クランチロールを買収するなど、世界各地でアニメ関連のM&Aを繰り返す。東宝もこれに対抗し、アメリカのGKIDS、イギリスのアニメ・リミテッドなど映画配給会社を相次いで買収する。

国内ではKADOKAWAがアニメスタジオの運営に乗り出し、複数のアニメ制作会社を買収した。 アニメは専門性が高く、人脈も必要なため、ゼロからの立ち上げではないM&Aによって、事業失敗のリスクを減らす狙いがある。変化の速いアニメ業界で、お金で時間を買っている面もある。こうした戦略が功を奏したわけだが、ソニーグループの『鬼滅の刃』の世界的なヒットも国外でのM&Aがあってこその成功だ。 大企業の国内外で相次ぐM&Aは、中小企業が多く経営基盤の弱かったアニメ業界に安定をもたらしている。またグループが大きくなることで、資本力で圧倒する米エンタメ企業に対抗する手段にもなる。 しかし良いことばかりでなく、亀裂も見え始めた。アニメ業界で大企業グループと中小企業の二極分化が強まったことだ。 ビジネスが大型化するなかで大企業が主導して大ヒットを狙う。結果、新作企画は有名漫画原作や続編、過去の人気作品のリブートばかりと保守化し、似たような大型プロジェクトばかりがあふれる。これは、いま米エンタメ業界が陥っているジレンマだ。 もともと日本アニメの人気は、効率化で多様性が薄れたハリウッドエンタメへのアンチテーゼでもあったはずだ。 企業の巨大化、効率化で創造性がそがれれば、成長をかえって失うかもしれない。創造性を維持しながらグローバルで戦える体制はどこにあるのか、いま日本アニメは成功の後の難しい転換点に立っている。

Yahoo!ニュース
世界市場3.8兆円、日本アニメは転換点へ――成長を支えたM&Aの功罪(ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュ... 昨今の国外でのアニメビジネスの伸張には目を見張る。日本動画協会の「アニメ産業レポート2025」によれば、24年の日本アニメの世界での市場規模は3兆8407億円で10年前の2倍...
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