フリーランス新法 禁止事項
発注事業者の禁止行為(第5条)
義務の対象者
義務の対象となる発注者は、「特定業務委託事業者」であり、かつ、フリーランスに1ヶ月以上の期間で業務委託を行っている場合です。
「1ヶ月以上の期間で業務委託を行う」とは、継続的に具体的な業務を1ヶ月以上委託する場合に限りません。
単発の発注であったとしても、発注日から納期までが1ヶ月以上空いている場合は「1ヶ月以上の期間で業務委託を行う」に該当します。
また、たとえ、年に数回、納期の短い業務を委託するだけだったとしても、契約期間を1ヶ月以上とする基本契約を締結している場合は「1ヶ月以上の期間で業務委託を行う」に該当します。
ですので、多くの特定業務委託事業者は、この義務の対象となります。
禁止行為の内容(7つの行為)
次の7つの禁止行為が定められています。これらの行為は、たとえフリーランスの了解を得ていたとしても違法になるので十分注意が必要です。
1 受領拒否
・・・フリーランスに責任がないのに、委託した作品の受取を拒むことです。発注者の一方的な都合で発注を取り消したり、納期を延期したりして、当初定めた納期に受け取らないことも受領拒否に当たります。
【例】アニメ制作会社が、アニメーターに対して、放送中のアニメの原画作成を委託したものの、そのアニメ放送が打ち切りになり原画が不要になったことから、その原画を受領しなかった
2 報酬の減額
・・・フリーランスに責任がないのに、当初定めた報酬の額を減額することです。
【例】ゲーム会社が、イラストレーターに対して、キャラクターデザインの制作を委託したものの、業績の悪化により制作に係る予算が減少したことから、当初定めた額より引き下げた報酬を支払うことにした
3 返品
・・・フリーランスに責任がないのに、フリーランスに著作・制作を委託した作品を納品してもらった後に返品することです。
【例】広告制作会社が、イラストレーターに対して、広告のイラストの制作を委託し、いったん納品されたイラストを一旦受領したものの、広告が中止になり取引先からキャンセルされたことから、イラストを返品した。
4 買いたたき
・・・フリーランスに業務を委託するに際して、通常支払われる対価に比べ著しく低い金額で発注することです。
エンタメ業界では相場がない取引も多いですが、「買いたたき」に該当するかどうかは、次のⅰ〜ⅳのような要素を考慮して総合的に判断されます。
ⅰ 報酬の額の決定に当たり、フリーランスと十分な協議が行われたかどうかなど対価の決定方法
ⅱ 差別的であるかどうかなど対価の決定内容
ⅲ「通常支払われる対価」と当該業務に支払われる対価との乖離状況
ⅳ 当該業務に必要な経費等の価格動向
5 購入・利用強制
・・・正当な理由がないのに、フリーランスに対して、発注者が指定する物や役務を強制して購入、利用させることです(事実上の強制の場合も含む)。
【例】演劇の制作会社が、演劇の出演者に対して、その演劇や自社の制作する他の演劇のチケットを購入させた。
6 不当な経済上の利益の提供要請
・・・フリーランスに対して、金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることでフリーランスの利益を不当に害することです。
【例】ゲーム会社が、音楽クリエイターに対して、ゲーム用楽曲として候補となる複数の楽曲案の制作を委託し、採用した楽曲についてはその著作権を自社に譲渡する契約としていたところ、採用した楽曲に加えて、採用しなかった楽曲の著作権を無償で譲渡させた。
7 不当な給付内容の変更・やり直し
・・・フリーランスに責任がないのに、費用を負担せずに、 フリーランスの制作した作品を変更させたり、フリーランスの作品を受領した後にやり直させたりして、 フリーランスの利益を不当に害することです。 発注側の都合で、発注を取り消したり、やり直しをさせる場合には、フリーランスが作業に要した費用をしっかり負担する必要があります。
【例】ラジオ番組制作会社が、放送作家に対して、ラジオ番組の台本の作成を委託し、内容を確認した上で台本を受領したにもかかわらず、取引先の意向により台本を大幅に修正させ、修正作業に伴う追加の費用を支払わなかった。
まとめ
フリーランス保護新法のうち、取引の適正化の観点からの規定について解説。
何度かお伝えしているように、「取引条件の明示義務(第3条)」はフリーランスが発注者になる場合も課される義務ですし、多くの企業は「期日における報酬支払義務(第4条)」「発注事業者の禁止行為(第5条)」も対象。
エンタメ業界でも、これらの義務への対応が必要になってきますので、しっかりと把握していただければと思います。

